アザ
はじめに
メラニンを原因とする色素性疾患、①太田母斑(青アザ)、②ADM(後天性真皮メラノーシス:ソバカスに見えるアザ)、③扁平母斑(茶アザ・)、④母斑細胞母斑・色素性母斑(黒アザ・ホクロ)などの治療には、原因となるメラニンに選択的に吸収されるレーザー光線治療や光治療を行います。
とくに扁平母斑と太田母斑およびADM(後天性真皮メラノーシス:ソバカスに見えるアザ)のレーザー治療を行うと、アザのメラニンも消えますが同部位の通常のメラニンも消えることになります。
結果として、アザは消えても白く色抜けした顔になります。
当院のアザ治療は、この欠点をなくした治療として、眼球・眉毛・睫毛以外の顔全体の治療を行い、ノーメイクを目指す治療を行います。
【リスク・副作用】①③④
レーザー治療は目的に合わせたレーザー光線を皮膚に照射して、除去したい目標を破壊して治療とします。皮膚の構造を変えるために外部から深部にレーザー光線が照射されますが、数回では改善できません。個々の症例に適した間隔で継続的にレーザー治療を複数回行うことで、効果が現れてきます。
複数回の治療が必要ということは、治療回数ごとの費用がかかります。しかし、治癒までの回数は予測できません。このため当院では、診察で見積もりを立てています。この費用を初回治療までにお支払いいただき、その後、毎回受診ごとに再診料のみをお支払いいただきます。
治療ごとに要する局所麻酔、薬剤、ガーゼ、テープ等は、無償で提供させていただきます。
同じアザの病名でも病変部のメラニンの分布や皮膚の性質、年齢、性別など個人差により、満足な効果が得られにくい場合があります。
治療中は、治療部位の発赤、痂皮形成、色素沈着、瘢痕化などの副反応が生ずることがあります。
とくに顔という露出部の治療は、どうしても治そうという姿勢が必要です。
露出部だと治療直後の外見を気にすると治療が上手くいかなくなります。
「顔や露出部のアザ」の治療時期の選択には、
- 乳幼児
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 高校
- 大学
- 社会人
の順に治療を受け入れにくくなりますので、ご注意ください。
(治療直後よりレーザー治療でヤケドしてボロボロになるので、社会人では治療が大変になります。)
① 太田母斑
太田母斑については、1998年日本レーザー医学会総会でシンポジウムストとして諸問題を発表いたしました。さらに研究を重ねることで、レーザー照射方法にいろいろな工夫をはかり、太田母斑部分以外の眼球・眉毛・睫毛以外の顔全体の治療を行うことで、今まで状況によっては難しかった健常部位と治療部位の色調をまったくわからなくできるようになりました。治療期間と治療回数については、健康保険適応だと3ヵ月に1回という制限がありますが、自由診療ですので回数制限がないため、学業や仕事に支障が生じないように積極的に治療することで短期間に治せます。
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太田母斑:アザ部分のみならず正常部分を含めた顔全体の治療が必要
太田母斑の治療は、ノーメイク状態で10cmの至近距離から顔を見られてもわからなくなる仕上がりにするには、いくつかのコツがあります。
太田母斑の顔を見ると例外なく以下の所見が存在しています。
これらをすべて治療しないとノーメイクにはなれません。
- 頬部の青アザ
- 上・下眼瞼部の色素沈着(瞼が頬部より茶色に見える)
- 鼻根部の色素沈着(メガネの跡と勘違いしている)
- 赤唇部(口唇の赤い部分)の色素沈着(指で口唇を反転させるとベルト状の色素沈着がわかる)
- 青あざのある反対側の目の下の頬部にうっすらと点状の色素沈着
- 多くの症例で前額部やとくにコメカミがなんとなくくすんでいる
これらは30歳頃からさらに目立つようになり、妊娠とともに急激に目立つようになります。
10~20代に太田母斑のレーザー治療を開始すると、まだシミ年齢ではないため、頬部の青アザのみを治療してもある程度は満足できる結果となります。
しかし、40代のシミ年齢になるとレーザー治療をおこなって消えたと思っていた深部のアザのメラニンが徐々に見えるようになってきます。ここに加齢によるシミが加わるため、単に太田母斑の残骸の治療だけではきれいになりません。
太田母斑のみを治療しても白く抜けるだけで、アザの周りのシミは残っています。これではノーメイクにはなれません。
当院のアザとシミ治療は、ノーメイクの仕上がりを目指していますので、当院の太田母斑治療は頬部の青アザのみを治療しません。
眉毛と睫毛と眼球以外はすべて治療いたします。
上記の色素沈着をすべてきれいに除去してはじめてノーメイクになれる結果となります。
② 後天性真皮メラノーシス(acquired dermal melanosis:ADM)
両側性太田母斑様色素斑ともいわれるシミに見えるアザです。太田母斑の一表現型と考えられます。
両側の下眼瞼および鼻部にまたがるソバカス状のシミに見える色素斑が特徴です。
また下眼瞼部に青いクマ状態に見える色素斑も存在するので、青い色素斑のみが存在する場合には『青グマ』といわれています。
太田母斑と同じく詳細に観察すると、以下の所見が存在しています。
- 両側頬部のソバカス状のシミ
- 上・下眼瞼部の色素沈着(瞼が頬部より茶色に見える)あるいは暗青色の色素沈着
- 鼻根部の色素沈着(メガネの跡と勘違いしている)
- 赤唇部(口唇の赤い部分)の色素沈着(指で口唇を反転させるとベルト状の色素沈着がわかる)
- 多くの症例で前額部やとくにコメカミがなんとなくくすんでいる
これら①~⑤をすべて治療しないとノーメイクにはなれません。
眼球・眉毛・睫毛以外の顔全体の治療を行い、ノーメイクを目指す治療を行います。
【リスク・副作用】
ADMの治療上、大きな問題点が2つあります。
一つは、上記の①~⑤の病変部位を主にレーザー治療する必要があります。同一病変部に数回の治療を要しますので、レーザー治療回数が考えていた以上に大幅に必要です。
もう一つは、30歳以降では、ホルモン異常による肝斑が併存しています。このため単に病変部位のメラニンをレーザー照射して破壊しても、照射後2週半頃よりPIH(post-inflammatory pigmentation:照射後色素沈着)が生じてきます。
要は治療回数と有害反応を少なくすることが要求されます。
そこで当院では、ADM治療とシミ治療にはオールインワン治療コース(シミ・シワ・ホクロ対応)を設定しています。1年間(12ヵ月)以内ならば12回以上のレーザー治療を受けることができます。
肝斑治療用の内服薬(トラネキサム酸、VC)も12ヵ月分処方されます。
初年度55万円(税込み)で2年目から44万円(税込み)です。
治療中は、治療部位の発赤、痂皮形成、色素沈着、瘢痕化などの副反応が生ずることがあります。
露出部のレーザー治療ですので、学業や仕事に支障が生じないように積極的に治療することが大切です。
ある程度の満足な結果を得る期間と回数は、30歳前ではオールインワン治療コースを1~2回、30歳以降ではオールインワン治療コースを2~3回を要します。
下記の発表内容をオールインワン治療コースに反映させています。
【参考までに】
- 2015年 4月8日 京都 第58回日本形成外科学会学術集会
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【パネルディスカッション2 レーザー(肝斑)】
肝斑の長期間複合治療と新しい概念(リセット:強制沈静化)による挑戦
―TRTからTDT理論へー - 2016年 4月15日 福岡 第59回日本形成外科学会学術集会
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【症例検討3 美容医療トラブル】
集学的複合治療によるレーザー治療後の難治性色素沈着の治療 - 2016年 4月15日 福岡 第59回日本形成外科学会学術集会
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複合治療による"いわゆるシミ"治療の年代別問題点と工夫
―シミ・シワ・ホクロの集学的治療― - 2018年4月13日 博多 第61回日本形成外科学会学術集会
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顔面の老化に対する整容のリカバリー(非観血)
―シミ・シワに対する集学的複合治療―
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ADM(シミに見えるアザ):頬部のソバカス、眼瞼部の色素沈着
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ADM(シミに見えるアザ):頬部のソバカス、鼻根部の色素沈着、眼瞼の色素沈着、上下口唇赤唇部の色素沈着
③ 扁平母斑
メラニン系のアザのなかで難治性とされる色素性母斑・扁平母斑については基礎研究と臨床研究を重ねて、その成果を国内外で1998、1999、2001、2002、2003年に学会発表してきました。
この成果に基づき発展させたThree Step Laser Treatment法を治療に取り入れました。
とくに扁平母斑については、2005年4月の学会で『レーザー治療の限界』として検討されましたが、2005年と2008年とに効果的な治療法を発表しました。
従来の治療では、レーザー治療後一旦は色調が薄くなりますが、時間の経過とともに色調が濃くなります。メラニンの再発は、多くの症例では治療後3週で毛穴から生じてきます。この最大課題に対して基礎および臨床的研究に取り組み、メラニンの分布による色素再発に対する防止の工夫を行っています。
改善(ちょっとでも薄くなれば改善)ではなく治癒を目指していますが、部位とタイプに応じて再発傾向が少ないものと、治療抵抗性のものがあります。治療効果の得やすい部位であっても、治療部位が露出部であると、治療制限と仕上がりに影響します。露出部だと治療直後の外見を気にすると、適した治療間隔での治療が上手くいかなくなります。
露出部の扁平母斑治療は、どうしても治そうという姿勢が必要です。
とくに18歳以降の顔の扁平母斑治療では、扁平母斑の病変部位のみを治療しません。
この理由として多くの症例では、扁平母斑のみではなくADMを合併しているからです。扁平母斑が改善されると、いままで気にしていなかったADMが目立ってくるのです。
18歳以降の顔の扁平母斑を詳細に観察すると、以下のADMの所見が扁平母斑と合併して存在しています。
- 両側頬部のソバカス状のシミ
- 上・下眼瞼部の色素沈着(瞼が頬部より茶色に見える)あるいは暗青色の色素沈着
- 鼻根部の色素沈着(メガネの跡と勘違いしている)
- 赤唇部(口唇の赤い部分)の色素沈着(指で口唇を反転させるとベルト状の色素沈着がわかる)
- 多くの症例で前額部やとくにコメカミがなんとなくくすんでいる
顔の扁平母斑だけでなく、これら①~⑤をすべて治療しないとノーメイクにはなれません。
眼球・眉毛・睫毛以外の顔全体の治療を行い、ノーメイクを目指す治療を行います。
【遮光の必要性の有無について】
遮光の必要性の有無については、まったく必要ありません。
日焼け止めの使用も、ガーゼやテープでの遮光も不要です。
シミ治療と血管腫(赤アザ)の治療中は、厳密に日焼け止めを必要としますが、とくに色素性母斑(黒アザ・ホクロ)と扁平母斑(茶アザ)では、治療中の日焼け止め等の遮光は不必要です。理由は、色素が紫外線で濃くならないからです。
【リスク・副作用】①③④
治療経過では、色調が濃くなったり、赤くなったり、などの心配な現象が生じますが、この時期を乗り越えると、急に再発しにくくなります。
病変部のメラニンの分布や皮膚の性質、年齢、性別など個人差により、満足な効果が得られにくい場合があります。
治療中は、治療部位の発赤、痂皮形成、色素沈着のほかに瘢痕化などの副反応が生ずることがあります。
費用
費用については、すべて自由診療です。メラニンによるアザの中でも扁平母斑は異質で、通常のレーザー治療では「再発をする」という特性があります。このため、数回のレーザー治療では改善できません。
複数回の治療が必要ということは、治療回数ごとの費用がかかります。しかし、治癒までの回数は予測できないため、診察で見積もりを立てています。この費用を初回治療までにお支払いいただき、その後、毎回受診ごとに再診料のみをお支払いいただきます。
治療ごとに要する局所麻酔、薬剤、ガーゼ、テープ等は、無償で提供させていただきます。
治療費の評価項目は、下記の因子をチェックして決定されます。 扁平母斑の面積では、評価していません。面積が狭くても、非常に広範囲でも費用に大きな差はありません。治療の難易度で判定しています。
評価項目
- 扁平母斑の分類
- 存在部位
- 過去に受けた治療の影響
- 年齢
- 皮膚の性状
「顔や露出部のアザ」の治療時期の選択には、
- 乳幼児
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 高校
- 大学
- 社会人
の順に治療を受け入れにくくなりますので、ご注意ください。
(治療直後よりレーザー治療でヤケドしてボロボロになるので、社会人では治療が大変になります。)
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扁平母斑
④ 色素性母斑・母斑細胞母斑(黒アザ・ホクロ)
メラニン系のアザのなかで難治性とされる色素性母斑・扁平母斑については基礎研究と臨床研究を重ねて、その成果を国内外で1998、1999、2001、2002、2003年に学会発表してきました。
1999年07月01日 アメリカのSan Franciscoで開催された国際学会:12th Congress of IPRAS(USA)で穴の開かない色素性母斑(黒アザ)治療について発表しました。
この成果に基づき発展させたThree Step Laser Treatment法を治療に取り入れました。
従来のホクロ治療の場合、平らなホクロをレーザー治療すると『ホクロはとれても陥没する』または『陥没させないようにすると色が残る』のどちらかの不満足な仕上がりになります。
国際学会で発表した方法の場合、やっかいな平らなホクロを『凹まさずに色をとる』ことを目標としています。
ホクロのタイプ、大きさ、存在部位、職業的制約などを考慮した治療法を選択いたします。
【リスク・副作用】
病変部のメラニンの分布や皮膚の性質、年齢、性別など個人差により、満足な効果が得られにくい場合があります。とくに深部のメラニンが浅層に分布していれば少ない回数で効果が得られます。メラニンが深層に分布していれば治療回数が多くなります。数年経過して色素が再発する場合がありますが、4回目以降であれば再診料のみで治療費は不要です。
治療中は、治療部位の発赤、痂皮形成、色素沈着、瘢痕化などの副反応が生ずることがあります。
症例によっては、陥凹変形をきたすこともあります。
処置について
(1)平らなホクロでは、治療直後から女性ではお化粧ができ、男性はそのままで目立ちません。
男女ともにテープは不要です。
治療日より1週間程度朝と夜に薬を塗布していただくだけです。シャンプー・洗顔は当日より可能です。また美白クリームは不要です。
(2)隆起したホクロでは、治療部位のみお化粧を避けていただきます。
隆起したホクロの場合、ホクロの大きさによっては治療直後のみテープを貼ることもあります。このテープは治療後にお渡ししています。自宅ではテープ等の保護材は不要です。シャンプー・洗顔は当日より可能です。治療後、2週間前後で痂皮がとれます。
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頬部のホクロ除去後の陥凹変形
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陥凹変形(色素残存)
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divided nevus:睫毛欠損に注意しての治療が必要
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左下眼瞼縁部の色素性母斑:睫毛欠損に注意しての治療が必要
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色素性母斑:背部色素性母斑
Sutton's nevus
『小さなホクロ(母斑細胞母斑)が中心にある環状の白斑』というホクロと色素脱失が組み合わさった母斑です。中心のホクロに存在するメラニンに対する自己免疫反応が生じ、周囲の皮膚のメラニンにも自己免疫反応が生ずるため白斑が生ずるといわれています。
中心にあるホクロを除去すると周囲の正常な皮膚の色と同じくなってきます。
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Sutton's nevus:色素性母斑(ホクロ)の周囲の色素脱失が目立つ